(1)環境目的・目標と経営計画
通常、企業ではその企業の存在価値を具現化した経営理念を有し、経営理念を実現していくための経営計画を策定しています。経営計画は基本的に、3年から5年後のあるべき姿を描いた中長期経営計画及び中長期経営計画を実現していくための単年度事業計画によって構成されています。経営理念―経営計画は、まさにその企業全体のマネジメントシステムであるといってもよいでしょう。
ISO14001:2004規格では、環境目的・目標は文書化されていることを求められていますが、独立した文書であることまでは要求されていません。組織における経営計画のなかに環境目的・目標が組み込まれているならば、改めて文書化する必要はないといえるでしょう。たとえば、環境負荷に深く関連する組織や環境ビジネスといわれるような業態であるならば、組織の活動、製品・サービスの製作それ自体が環境目的と符号してもおかしくありません。また、ISO14001:2004規格が要求する環境目的・目標の要件は、@実施できる場合には測定可能であること、A汚染の予防、適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項の順守、継続的改善に関するコミットメントを含めて、環境方針に整合していること、B目的・目標の設定・レビューの際は、法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項、著しい環境側面を考慮に入れること、C技術上の選択肢、財務上、運用上、事業上の要求事項、利害関係者の見解も考慮すること、D実施計画を策定すること(目的・目標達成のための責任の明示、手段、日程を含めること)、とされています。これらの事項は、経営計画の策定の際にはいずれも当然考慮される事項でもあります。
しかしながら、ISO14001:2004規格を意識しないで構築された経営計画の場合は、すべての要件を満たさないこともあるでしょうし、業態によっては経営計画と環境目的・目標を一致させるのに多少無理がある場合もあると思います。そのときは、ISO14001:2004規格にそって環境目的・目標を構築していく必要があります。以下、新たに環境目的・目標を設定する際の手法について解説します。
(2)環境目的の設定
@ビジョンを明確にする
まず、部門長レベルの会議体において、3年から5年後、自組織はどうなっていたいか、あるいはどうあるべきなのかについての具体的なイメージを議論します。環境法や技術などは変化が激しいので、先の予測できない部分はありますが、ビジョンがなくては進む方向が定まりません。その際、組織の規模・財務力・競争力・地域社会への貢献なども加味して具体的イメージを作成するとよいと思います。もちろん、小規模な組織であれば、全員で議論をしてもよいでしょう。
A現状とビジョンとのギャップを把握する
次に、これまでに抽出した著しい環境側面や法的要求事項、初期環境レビューの調査結果を活用しながら、描き出したビジョンと現状とのギャップを把握します。たとえば、汚水の排水管理には万全を期すべきである(ビジョン)が、排水管が古く時々汚水の漏洩がある(現実)、などです。
そして次に、把握されたギャップを組織の内部的な環境要因(ヒト・モノ・カネ・情報・技術など)と外部的な環境要因(法的その他の要求事項・資源・技術・ステークホルダー・取引先など)から分析していきます。その際、マーケティングによく用いられるSWOT分析(組織の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの軸から評価する手法)のフレームワークに落とし込んでいくと、整理しやすいでしょう(下図参照)。